2014年03月31日

枝葉なりに

近頃は完全に業務連絡掲示板と化してしまっている当ウェブログ、反省の気持ちも込めて本日は日々の制作風景について記してみようと思います。たまの事ですので物珍しさに興味を持っていただけたら嬉しいですね。

さて今回とりあげる話題は…

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少し肌寒いくらいの気候のうちに済ませておきたい仕事、鍛冶ですね。
打っているのは木材の切削に用いる刃物です。


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現在、木工作に用いる刃物の入手法は、道具鍛冶職さんが製作されたものを求めるのが一般的かと思いますが、今でもごく一部に木工屋が自ら鍛えるのが主流というジャンルがあるんですよ。

そのマイナーな分野というのが、和式ろくろを用いた挽物(ひきもの:木材を回転させて円形の器物を削り出す加工法)の仕事です。挽物用のろくろには日本古来のものとは別に主に欧米で発展したスタイルもあるのですが、欧米式では自作刃物を用いるケースは少ないようですね。

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ボクが木工ろくろを学んだ加賀山中は、数ある漆器産地の中でもとりわけ挽物木地生産が盛んなことで知られ、その集積度によって独自に培われた多くのノウハウが伝えられている地でもあります。

その最たる例のひとつが、この「ろくろ鉋(かんな)」製作の技術。薄手で繊細な造形や多様な挽き目文様を特徴とする山中木地は、その技巧的な作業に適した鉋があればこそのものと言えるでしょう。

もちろん木工における刃物とは、加工精度だけでなく生産性にも直結する道具ですから、数を挽いてなんぼの木地職人にとっても鉋の良否は最大の関心事のはず。

事実、木地師が刃物について語り合えばカンカンガクガクもめずらしい事ではありません。というのも、各工人の体格や筋力、得意とする品目や加工法、生産規模といった物理的な要因はもちろん、制作に対する基本的な考えや立ち位置、あるいはより直感的な好みや性分、クセなどによっても良しとする刃物の形状や素材、製作手順は千差万別だからなんですね。

独自に編み出した加工法に用いる特殊形状の鉋などについては、秘伝として人目につかないように気を配ったりする気風もいまだに残っているようですよ。

ちなみに木地挽き専業でもないボクの場合などは、製作する刃物の種類、品質ともたかが知れたものですが、幸いにも師事した木地師さんが制作する器物にあわせて手堅く鉋を整えることを是とする方だったため(汎用的な鉋ひとつで多様な加工をこなすことを粋と考える方もいらっしゃいます)、短い修業期間のわりには比較的幅広い形状の刃物製作の技術を学ぶことができたように思います。

また親方が手ずから鍛えてくれた鉋もいくつか手元に残っており、今も折にふれて手本として参考したり、ありがたく使わせてもらったりしていますね。

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日々の制作を進めるうえで欠かせない道具や技法の全ては、言うまでもなく先達の工夫と研鑽の積み重ねによって形作られ、伝えられてきたものですが、その集積の度合いにおいてとくに産地というものの果たす役割の大きさや奥深さに改めて思い至る、そんな機会が鍛冶仕事をしているとよくあります。

産地に学びながら直接的にはそこに属さず活動している自分のようなつくり手は、幹から枝分かれした梢みたいなモノかなぁなんて思ったりする事もあるのですが、やっぱり枝葉はどれほど伸びようとも幹や根があってのものなんですよね。

小さな梢が巨木の恩に報いるのは難しいでしょうが、せめて自身をはぐくみ支えてくれる根や幹について日頃から意識的でありたいと思います。そして頼りない枝葉なりにも立木をにぎわせる花実を結べるよう頑張らねばな〜と気持ちもあらたまる春盛りのひと時です。


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posted by nakoji at 22:09| 日々のあれこれ