先日上京の折、所用のため千駄ヶ谷駅に降り立つ機会がありました。
改札を出て、東京体育館に次いで目に入ってくるのがコチラのビルですよね。

その昔、このビルの壁面に6色に塗り分けられた大きなリンゴのロゴが掲げられていたこと(自社ビルでもないのに)を懐かしむ人はどのくらいいるのかなぁ、なんて思いながらしばらくの間ボンヤリと眺めてしまいました。

10代の後半、ボクはApple社のMacintoshに夢中でした。
小学生の頃からホビーパソコンに親しんでいたボクにとって、Macはまさに憧れのスーパーマシンといった存在で、初めて手にした(当時でもひどく型落ちな「LC II」という機種でした)時には、その先進的な機能とムダのないデザインの素晴らしさにシビレたものです。
Macintosh Classic
Macintosh LC III
Macintosh Quadra 700大学入学後に「MUG:Macintosh Users Group」(当時マイナーだったMacの愛好者がMac普及のために(笑)各地で同様の団体を作っていたんです、今も残ってるのかな・・・)という学内サークルに所属して、千駄ヶ谷のアップルコンピュータ(当時の日本法人)本社でイベントを催したこともありました。ちなみにそのころのアップル本社は現在のAppleStoreなどからは想像もできないほど飾り気のない実に簡素なオフィスでしたね。
時代はちょうどインターネット大衆化の黎明期。Macでネットサーフィン(死語でしょうか)を体験できるというだけで遠方からわざわざ足を運んでくれる人が大勢いたわけですから、今から考えてみると笑ってしまうほどに牧歌的な時代でした。
しかし程なく(大学初年度の晩秋でした)「Windows95」が発売されてMacの代名詞でもあったグラフィカルなユーザーインターフェースが広く知られることになり(それ以前は暗号のような命令文を入力することで操作するコンピュータが主流だったんです)、インターネットの劇的な普及も相まってパソコンが一気に家電化、世の中の情報化が飛躍的に進むという、その渦中にあってもそれと実感できるほどに変化の時代でもありました。
ITの業界では1976年前後生まれのインターネット関連の起業家たちを「76世代」などと呼ぶそうですが、ボクも能力と野心を兼ね備えた級友に付き従っていたら、今ごろ「IT長者」はないにしても「IT小金持ち」くらいにはなっていたかもしれないな〜なんて子供じみた想像をしたこともありましたね。どこで間違えたのか、目の前にある現実の仕事はひどく原始的な作業を強いるものばかりなんですが…。
そして、その後のボクのアップル熱はといえば、Windowsの台頭によるMacの独自性の後退や、Apple社の業績不振にともなう様々な醜聞や迷走、ボク自身の使用環境の変化、製品デザインの路線変更(iMacシリーズの定着)など、諸々の理由によって急速に冷めていったのでした。

以来、リンゴマークにはとんとご無沙汰だったのですが、つい先ごろずいぶんと久しぶりに(6色ロゴ時代でしたから、かれこれ15年ぶりぐらい?)にアップル製品を購入することに。

新型のタブレット端末「iPad mini」です。
話題の7インチクラスのタブレット、従来型の携帯電話との組み合わせがとても合理的かつ経済的に思えて各社の新製品が出揃うの待っていたのですが、大本命のGoogle社製の搭載カメラが思いのほか非力とのことで渋々(笑)アップルを選択。
「20年経った今でもQuadra700よりカッコいいパソコンは見たことない」なんて考えている懐古趣味のオールドMacファンにはオシャレ過ぎて恥ずかしい程のiPadではありますが、悔しいことに、その利便性と性能の高さに入手してほどなく片時も手放せない存在になってしまいました。
そのうえ毎日接していると、良くも悪くも昔と変わりない「アップルらしさ」を感じることもあり(自分たちが考える「スマートさ」をユーザーに強制したがるところ等々)、先端的な分野で業界をリードしているのは、やはり設立以来の開拓気質が今も残っている証拠なのかなと今更ながら感心したりもしています。

そしてこの小型タブレット端末、3歳のボウズが軽々と手にとって誰に教えられることもなく扱っている姿などを見ると、「パソコンの父」と呼ばれるアラン・ケイが理想のパソコンとして提案した「ダイナブック」(東芝製ノートパソコンではありませんよ)のことを思い出します。
Apple社の創業者の1人として高名なスティーブ・ジョブズに大きな衝撃をあたえたとされるダイナブックのコンセプト、詳しい知識があるわけではないので確かなことは言えませんが、漠然といま目の前にあるようなマシンだったのかもしれないなぁと想像しています。
つまりタブレット型パソコンという新しい分野においても、いち早くエポックを感じさせる程の製品を作り上げたアップルの先見性と開発力には、素直にさすがと言うほかないということになってしまいますか。
あれ、そんなつもりは全くなかったのですが、結局はアップル賛辞で締めくくることになってしまいましたね。自分では完治していると思い込んでいたリンゴ熱病、20年経っても治ってなかったってことなのかな〜。
ちなみに生前のスティーブ・ジョブズは7インチクラスのiPad開発には強く反対していたとの記事を目にしたことがありますが、個人的にはこのサイズ、常時携帯する使用方法でしたらツボを押さえたとっても良い設定だなぁと思います。
posted by nakoji at 22:42|
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