2011年10月11日

静岡手創り市終了

10月8、9日の日程で開催されました『ARTS & CRAFT 静岡手創り市』、無事に終了して戻ってまいりました。

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こうした野外イベントは、見学や出展者のお手伝いという形で係わらせていただく機会は今まで何度かあったのですが、出展当事者として参加するのは初めてのことでしたので、大きなトラブルもなく終えることができて胸をなで下ろしているところです。

両日とも秋らしいさわやかな好天に恵まれたのも幸いでしたが、ご来場いただいた皆さまの励ましやお褒めのお言葉、また開催関係者の皆さんや他の出展者の方々の支えがあってのことと感謝しております。どうもありがとうございました。

また、自ら出展してみて初めて明らかになった多くの課題も確認することができましたので、今回の経験をこれからの日々のものつくりに活かしていければと考えています。


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     長い時間、父ちゃんの仕事に付き合わせてしまいスマンかったね


posted by nakoji at 17:17| 日々のあれこれ

2011年09月26日

紙ひとえ

先の記事でもお知らせしました通り、10月にイベントに参加させていただけることになり、ここ最近は比較的小さな空間での展示に相応しい小品の制作を集中的に行っています。

うつわなどの制作をしばらくサボっていたこともあり、出展が決まってからあわてて本腰を入れるといったお恥ずかしい状況なのですが、これを機会に今までにはなかった形状や仕上げのものもいくつか手がけてみることにしました。


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数多い工程の中で、この「新しい形を探る」という作業は何にもまして楽しいものです。特にうつわのような繊細な造形が求められるものとなると、文字通り「紙一枚」の差異で全体の印象が変わってしまうようなシビアな面がありますから、取り組むときの緊張感と高揚はその制作に携わる人だけに与えられた役得と言えるようなものかもしれませんね。

実際にはボクのようなものが「紙ひとえ」の違いに心を砕いて造形を追い求めているかのように語るなど出過ぎるにも程があるといったところでしょうが、紙一枚ほどのひと削りによって印象の変化を直感するといった一瞬は、ものつくりをされる方なら誰にでも覚えがあるのではないでしょうか。ま、ボクだけについて言えばそういった場合の多くは「やってもうた!」というパターンなんですが・・・。

それにしても、紙一枚の差分も見逃さないほど繊細なのかと思えば、同じうつわでも少し部位が移れば1ミリ以上の誤差があってもさほど気にならないというのもまた事実でして、ヒトの目というものの不可解さにはなんとも困ってしまいますね。

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さて、「紙ひとえ」ということについて、ひとつ思い出す話があります。

下の画像、同形のうつわを複数作る際に形状の基準とする「型板・型紙」というものです。手本となる器物に合わせて薄板や紙を切り抜いただけのものなんですが、手本に型板を密着させて明かりにかざし、隙間から全く光が漏れないようにするのは意外に根気のいる作業なんですよ。そういった点では、この型を作っている間が最も「紙ひとえ」というものを意識する時間といえるかもしれませんね。


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    (ボクの場合、形状が確定したものは耐久性のある木材で、
        変更する可能性があるものは簡易的に紙で型を作るようにしています)



この型板作り、刃物で大体の形状を削り出し、紙やすり等で微調整をして仕上げるのが一般的な手順かと思うのですが、木工ろくろの指導をしてくださっていた先生のうちのお一人は、いつも小刀のみで仕上げるようにとおっしゃっていました。

まっすぐな刃を持つ小刀でなめらか曲線、特に凹状の曲線を削り出すのはとても難しいものです。ただでさえ根気のいる型板作りの作業なんですが、刃物だけを用いてとなるとこれはもう精神修養の領域と言えるかもしれません。

当の先生が普段からその方法で型板を作られているのかはお聞きしていないのですが、少し考えてみると、小刀だけでの型板作りという技術上の訓練というよりは、手本となるうつわの造形としっかりと向き合うことを通して、うつわの形状における「紙ひとえ」の大切さを伝えようとされていたのかなとも想像されます。

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もっとも、正確に作った型も実作業の中ではあくまで基準のひとつでしかありませんから、うつわ全体の造形に違和感を感じる点がなければ型通りの形状に固執しないようにしている面もあり、実用上はそれほど厳密なものでなくても十分に事足りるんですよね。

事実、熟達されたろくろ職の方であれば、型板など使わなくても正確に寸法通りの器物を量産できるでしょうし、あるいは自由な造形を指向されている方であれば、素材の個性やその時々の意識によって、ひとつとして同じものがない見事な形状を表すことができることと思います。

ただ、今のボクのうつわつくりにおいては、慎重に丁寧に求める形を探る、見付けた形状を正確に写す型をこれまた慎重に丁寧に作る、ついでに型作りを通してその造形をしっかりと見つめなおす、という手順が欠かせないものとなっています。

もちろん型板の微調整にはありがたく紙やすりを使わせていただいてますけどね。
posted by nakoji at 15:20| 日々のあれこれ

2011年08月21日

グローバる

海外旅行がお好きな方や、海外のお店からの通信販売を利用した経験がある方にとってはどうにもソワソワしてしまう近頃の円高傾向ですよね。

かくいうボクも、アメリカの工具屋さんから購入した商品をつい数日前に受け取ったばかりなんですが、じつは発注日のわずか6日後に荷物が到着したのでちょっと驚いているところでもあるんです。いままでも何度か書籍や工具などを国外のショッピングサイトで購入したことはありましたが、注文から1週間もかからずに手元に届いたという記憶はありません。

いやはや、これほどの短期納品が可能となると、日本国内の販売店から購入するのとなんら変わりないような気になってしまいますね。国がかわってもウェブサイト上での購入手続きの容易さは同じですし、良心的なお店であればつたない英文での問合せにも迅速に回答してくれますしね。

もちろん海外通販ならではの様々なリスクが付き物ではありますが、内外価格差や商品の多様さといった利点を考えてみると、購入時の選択肢のひとつとして常に考慮に入れておく価値はあるかもしれません。


また今回はこの荷物とは別に、米国外への直送を受けつけていない店舗から商品を購入し、転送を扱う現地業者の手を経て日本へ配送するという方法での輸入も初めて試してみました。

10ドルほどの転送手数料が必要となりますが、事務手続きに複雑な点があるわけでもなく、運送会社や転送業者からのレポートによると、こちらの荷物も今のところ当制作室に向けて着々と運ばれているようです。

荷物に付けられた追跡番号によって、販売店(米)→転送業者(米)→税関(日)→配送先(日)という輸送の状況をウェブ上でつぶさに確認することができるわけなんですが、冷静になって考えてみると、日本にいながらアメリカ国内を移動するたった1つの箱の所在をリアルタイムで把握できるなんて、この上もなく便利であると同時に、少しそら恐ろしくもあるようにボクには感じられるのですが、いかがでしょうか。

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すばらしく効率化された世界規模の流通・情報システムを利用し、さらに国内外の価格差を逆手にとってコストカットを図るなんて、グローバリゼーションによる恩恵の好例のようにも思えるのですが、それがまた国内産業、特に中小零細の製造業(もちろん当制作室もそこに含まれます)を苦しい立場に追いやる大きな要因になっているのも間違いないでしょうから、円高のおかげでわずかばかりの節約ができたと無邪気に喜んでいる訳にもいきませんね。

ただ別の視点から考えてみると、日本のいち消費者であるボクが気軽に海外のお店でのショッピングを楽しんでいるということは、海外にお住まいの方々が好みに合うものを求めて日本のサイトをご覧になるのもそれほど珍しいことではないという想像もできそうです。

うむむ、これは英語版のウェブサイトも用意しておいた方がいいかしら…。

まぁ実際のところ、ワールドワイドとは縁遠い日常を送っているボクのようなものが夢物語にふけっているという笑い話として片付けられる話題だとは思いますが、こわいほどの速度でグローバル化が進んでいる今の世にあっては、零細製造業の運営者として日本国内だけに目を向けているようではいけないのかなぁなどと考えさせてくれる良いきっかけともなった今回のお買い物でした。

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ちなみに先日届いたその荷物、刃物の研磨を行うための電動工具で、木工作、なかでも木工ろくろをされる方の間ではよく知られたものかと思います。この種の研磨機の必要性を感じながらもその価格の高さを理由に購入を先送りにしていたのですが、記録的な円高に背中を押されて思い切って導入することにしました。

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   TORMEK T-7 Water Cooled Sharpening System

もし使い勝手を試してみたいと思われる方がいらっしゃったら、手土産と刃物持参で遊びに来ていただければと思います。

posted by nakoji at 20:28| 日々のあれこれ

2011年07月14日

難儀なしごと

制作の参考資料となるような書籍、物品に対する姿勢についてはわりと意欲的な方かなぁと思っているのは以前にも記した通りなんですが、それに比べ今回取り上げる分野に対してはボクはあまり関心が高い方とはいえないかもしれません。

日々の制作に欠かせない工具類、特に手作業に用いる「手工具」についてのお話。

工具に関心が薄いというのはつくり手としてどうかと思われるでしょうが、その分野に造詣の深いご同業の皆さんや趣味として愛好されている方たちの手工具に対する情熱に比べれば、ボクがそれに費やす労力や金銭などは(職業制作者としては)必要最小のものと言わざるをえないというのが正直なところです。

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とは言いながらも実は先日、必要に迫られてこんなものをつくりまして…。


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木工作で広く使われる「鉋:カンナ」という木材を削る道具ですね。家具程度の大きさのものを制作する場合、いちばん手にする機会が多い鉋は画像内でひときわ大ぶりに見えるもの程のサイズが一般的でしょうか。こちらの鉋は木工刃物屋さんから購入したもので、今回の主役はその上に乗っている3つの小さな鉋のほうです。

この小さな鉋、大きな鉋が使えない入り組んだ場所を削る場合や、木材を特殊な形状に削り出す場合などには不可欠な道具でして、3つのうち最も小ぶりなものには小指のツメ程の刃物がすげてあるんですよ。

このような鉋は大きさも形状も用途(削る対象)に合わせてそれぞれ用意する必要があるためその全てを市販の道具でまかなっていたら大変な出費になってしまいますし、既製品ですと大幅に手を加えないと使い勝手が悪い場合も多いので、これらの小細工用の鉋については自作されているつくり手が多いのではないでしょうか。

幸い当制作室は刃物をつくる鍛冶作業のための器具を備えているので、刃を収める木製の台はもちろん、鉋刃自体も自前で調達できるんです。つまり必要とされるのは自分の労力のみといった好環境なのですが、なにぶん最初に申しあげたように手工具に対する熱意が少しばかり足りないタチなもので、なかなか重い腰があがらないんですよね。

ついに新調しなくてはどうにも作業が進まないという状態になったあげく、今回3挺仕立てることにしたのですが、手馴れない作業ばかりなので一向にはかどりません。結局、ボウズのオモチャのようなこの鉋をつくるのに、鍛冶仕事から台の調整まで丸一日費やしてなんとか仕上げることができたといった具合。ヤレヤレ…。

手工具への愛着の深い方でしたら嬉々として取り組むような作業ではないかと思いますが、ボクにとっては「木工を生業としている以上、避けては通れない難儀なしごと」のうちのひとつというところでしょうか。

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様々な方にご覧いただきたいと思っているウェブログですから、制作上の技術的、各論的なことだけを話題にするような記事はほどほどにしておきたいとものだと考えているのですが、厳しい暑気の中での鍛冶作業に少々げんなりしてしまったせいもあって、うさ晴らしがてらについつい些細なネタを取り上げてしまいましたね。反省しております。

些細ついでに余談をひとつ。画像左下に写っている2つの鉋も以前に自作したものなんですが、今回仕立てたものとは異なり木工機械用の大きな刃物を小さく切断してこしらえた鉋刃をすげてあります。刃の厚みや大きさが限定されてしまいますが、気温35℃を上回るような環境で鍛冶仕事なんてするものじゃありませんから、夏場につくるならこちらのタイプの方がオススメかもしれませんよ。

posted by nakoji at 16:32| 日々のあれこれ

2011年06月09日

ミニマル?

「ミニマル」とか「ミニマリズム」、「ミニマルデザイン」なんていう単語、近頃では専門性のそれほど高くない一般的な書籍や広告媒体の中でもわりと多く目にしますね。

日本語としては似たような意味で使われる「シンプル」などという語に比べてちょっぴりオシャレで知性的な印象を受けてしまう気がするのは、すっかり消費し尽くされて完全にその実体を失ってしまった多くのあわれな言葉(「エコ」とか?)の仲間にはまだ入っていないからでしょうか。

あるいはそんな印象を持っているのは時代遅れのボクだけかもしれませんね。

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さて、先日ご紹介したデスク、「ミニマル」とまではいかないにしても、できる範囲で簡明な造形を心がけて制作してみました。


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最終的な見た目については(その出来映えはともかく)ボクが考える簡明の範囲に収まったように思うのですが、その簡素な外観を実現するために内部構造などに通常以上の手間をかける結果となってしまいました。

いやはや、矛盾しているとのご指摘を受けたらグウの音も出ないですね。

実は当制作室(あるいはそれと同種の素材、工法を採用されている方々)の仕事においてはこういった事例はままあることでして…。

大雑把にいってしまうと、木のかたまりという有機的な素材を用いて実用の道具をつくる場合、木材ならではの「もろさ」や「不安定さ」を許容したり補ったりするために部材同士の方向性や位置関係、接合方法についての様々な制約のもとで構造を考える必要があるんです。

ですから、最終的な造形のイメージに合わせて構造を考えるという手順をとる場合、えてして普通以上の工夫が求められることになってしまうんですね。

しかし、そういったお使いになる方にとっては言わば知る必要のない技術的な事情によって制作上の工数を正当化するようなことはできるだけ避けたいとも考えていますし、なにより多少なりとも「ミニマル」なんてものを念頭においているからには、見た目だけでなく構造についても簡潔でありたいものです。


こちらのデスクについては、当制作室の定番品に加えることも視野に入れながら制作させていただいたので、実作業の中で確認することができた課題などをしっかりと整理したうえで内外ともによりよいものに仕上げていけたらと考えています。

posted by nakoji at 11:13| 日々のあれこれ